ONE SAUNA対談 VOL.4|SANU GEN FUKUSHIMA with ONE SAUNA HARUYA AGEMATSU Part.2
- Talk about ONE SAUNA
『SANU』&『ONE SAUNA』苦悩と未来
自然に深く関わる事業を展開している『SANU』と『ONE SAUNA』。今回はそんな両ブランドのトップである二人の対談をお届けする。年齢も同じで、地方出身。東京でバリバリと仕事をこなした20代を経て、今は自然と対峙する事業を展開しているお二人。PART.02では会社のトップとして抱える悩み、今後の展開、そしてサステナビリティな話まで。本音をぶつけていただきました。
PHOTO:Sauna_YOHEI MURAKAMI , Portrait_KOKI YAMASAKI
“自分たちの価値観”を深めることで繋がるサステナビリティの輪。
―――“地球に優しく”や“環境にダメージの少ない”といった地球環境への配慮を感じるお話がでてきました。漠然とした質問になりますが、お二人が“サステナビリティ”という言葉を聞いて感じることをお聞かせください。
「一度踏みとどまって、じゃあ付加価値ってなんだろうと思って、考えを巡らせる」(揚松)
揚松 晴也(以下 揚松)テーマとして大切なものですし、とはいえそればかり追求しても商売として成り立たない。僕らの場合、特にサウナの競合が安いものをどんどん出して、価格競争になっている状況です。そんな時だからこそ、本当の意味で僕らがやっていたことに立ち返ることが大事だと思っています。 僕らがやっていきたいことは、木材が使われなくなっている現状があるってところがスタート。それを深堀りすると、物が作られて売れないから作らなくなり、木材を切る必要がなくなる。そうすると林業が儲からなくなって、廃業に追い込まれていく。結果的に山が廃れて、土砂災害なども起こって環境のバランスも崩れる。そこが問題でした。 だから、サウナそのものの価値を伝えると同時に、どれだけ付加価値を足した上で買っていただけるようにするかが鍵。そうして、林業に関わっている方々がしっかりと生活できるようにしていかないと、本当に日本としてやばいなって感じています。
福島 弦さん(以下 福島)経営をやっていると、とはいえ事業も成長していかないといけない場面もあると思うんですがそんな時、サステナビリティを妥協しているなぁと感じる瞬間はありますか?
揚松そうですね。あると言えばあります。そんな時は一度踏みとどまって、じゃあ付加価値ってなんだろうと思って、考えを巡らせるようにしています。もちろん安く売ったほうが楽だし、価格競争に乗っかった方が、短期的には楽だけど、多分長く続かないと思う。そこでどれだけ工夫して付加価値を足していけるかという部分が楽しみなので、そこに挑戦していきたい。
福島なるほど。何でそんなに国産の木材を活用したいって思うんですか?
揚松宮崎に於いては、森林から木材を切り出す方々の中に、切り倒したまま山を放置して、その後のアフターケア(植林など)をせずにいなくなる事業者がいて、それが問題になっているんです。
福島木を切ってそのままの状態にしてしまう?
揚松そうです。しかも知らない土地(の木)まで勝手に切っていなくなる。先のことを考えずに切り倒すだけ切り倒して、その後の植林を一切やらず、商売として目先の利益だけを考えてやっている業者さんが少なからずいるのが現実です。私の自宅もそれなりに山に近いところにあって、まわりの森もそうなり始めている。本当に崩れて家に被害が及ばないのか?って思います。そういうことが起こっていくと、木って木材として売り物になるまでに何十年もかかるので、植林を止めることで、20年後に困る。宮崎もそういう木を育ててきた県で、過去のデータが残っていて、今も10年、20年後になったら木が足りなくなるという試算が出ています。もう、今から植えても追いつかないという現実を知って欲しいというのもあります。
僕らもサウナをやっていく中で、木を扱う仕事に関して学んだので、「あっそうなんだ!」って知ってもらうきっかけになってもらえればと思います。もちろん、それで世の中を変えるなんて大それたことはできないけど、一つのきっかけになってもらえればという気持ちで事業展開しています。
「環境に配慮するって言うことがカッコ悪いって風潮はあまり好きじゃない」(福島)
定期的に発刊される『SANU』が気になるトピックスを掘り下げるフリーペーパー『SANU Journal』
福島素晴らしいですね。『SANU 2nd Home』でも収益の一部を活用し、森林に植林する計画を進めています。そういったプログラムを進行しながらもサステナビリティな部分は常にジキルとハイド状態なので、やれてないこともすごく多いと感じています。事業の売り上げ、利益、スピードを優先するのか? 自然配慮部分を優先するのか?
実は僕らの場合、デザイン、クオリティ、ブランディングみたいな部分は僕じゃない脳みそ、本間さんがやってくれているので、自分の中であまり矛盾がない。僕は、事業成長しながら自然を大切にする方法を考えています。
その取り組みの一つに具体的な数値目標を掲げ、「サステナビリティでもこれくらいのこういう数値を目指します」っていうのを明確にする部署を創設しました。僕がそのリジェネラティブ室の初代室長になったんですけど。自分で組織を作って、CEOというキャップとは違うキャップをかぶりますって社内的に宣言して、自分としてもそれを自己認識しながら、まさに“踏みとどまる”ってやつをやっていこうと思っています。どこまでやっていくかが絶妙に難しい問題と捉えています。
一番はフィロソフィー「Live with nature./自然と共に生きる」に戻ってくるんですけど、僕は自然が好きな人が増えれば普通に自然を大事にする人も増えるし、大事にするでしょ?って考えています。まずは自然に行きたいと思ってもらえるいい空間だったり、建築などが必要だとも思っています。やれることは最大限とやり、やれないことはやれていないってちゃんと表明する。とは言え、別に環境に配慮するって言うのがカッコ悪いって風潮はあまり好きじゃない。それは堂々と言ったらいいと思う。やっていることはやってますと伝えようと思います。
僕らの場合でいうと自然に行くことの楽しさ、建築のかっこよさ居心地の良さみたいな感覚を通じて“Live with nature.”を体感してもらう。そして、さらに詳しいことは『SANU Journal』などで理解してもらえたらと思っています。今は、楽しんで苦しんだ先に唯一無二の存在になっていく、ひそやかな自信を抱えながら進んでいる感じです。
“繋がり”の先に見える、自然に還っていく場所。
―――“サステナビリティ”という言葉に翻弄されることなく、自分たちの価値観を深めて突き進む『SANU』&『ONE SAUNA』。最後にお二人が見据える未来をお聞かせください。
「淡々と自分たちのやるべきことを積み重ねていくことが未来へ繋がる」(福島)
福島本質的に人はサービスではないことを求めているんじゃないかと思っています。その土地の地の食材を買ってきて、料理しながらゆっくりとパートナーと話をした瞬間に豊かさがあったりとか。サウナをしながらちょっと外に出て外気浴している時に鳥の鳴き声が聞こえて、上空を見上げて自然の移ろい気付きます、という感覚。
実はそういう瞬間を心の奥底では求めていると思っていて、そういう余白の時間をうまく提供してあげたいっていうのが『SANU 2nd Home』のサービスのコンセプトの根にあります。カルチャーとしてライフスタイルの在り方の一つとして“セカンドホーム”を広げていくために、淡々と自分たちのやるべきことを積み重ねていくことが未来へ繋がると改めて感じました。
私も『SANU 2nd Home』に実際に泊まらせていただいて、シンプルでありながらも本当にわかる人はわかるけど、楽しみ方がわからない人は困る。みたいな感覚が良かったです。
サウナもそれと同じで、別にバレルサウナじゃなくてもいいし、心地よいサウナであれば何でもいいとは思うんですけど、本当に気付ける人に入って欲しいと思う。「これ(バレルサウナに使われている木材)って国産材だね」って気付ける人、それを作っている人の顔まで想像できるような人たちと繋がって、「サウナいいなぁ!」って言ってもらえるのがいいと思ってます。
やっぱりサウナっていいですね(笑)裾野が広いから。裾野が広い商材を通じて、その実は奥にある大きな問題、真面目な問題を伝えるってのに適していると思います。環境問題ってすぐ対立構造になっちゃう。受け手によって対立になると元も子もない。
そういう時にすごく柔らかくてみんなが触れやすいものを通じて、かつ地元みたいな入り方からやっているのも、いきなり環境問題とかっていっているわけじゃなくて、普通に地元の山がこういう状態だから、活用したほうがいいですよね、「あっ、そんな感じでその問題に触れていいんですね」って、こう開いてくれている感じがとても大事なスタンスですね。私たちも“セカンドホーム”を通じて、都市から定期的に自然に通うライフスタイルを広げるために、共感していただける人の裾野を広げて、海外も見据えて繋がっていきたいと思っています。まだ言えないことばかりですが、いろいろと仕掛けていこうと思っているので、乞うご期待といったところでしょうか。
「日本独自に進化したサウナ文化を逆に輸出していくのは面白い」(揚松)
揚松そうですね。日本はサウナブームですが、サウナの場合は依存性が高いので、(サウナブームが)廃れたからといってすぐに流行りのスイーツみたいな状況にはならないと思っています。 とはいえ国内のキャパは限られてますし、色々な方が(サウナ事業を)始めているので、僕らとしては数をたくさん増やしていこうというよりは、サウナって10年、20年と使ってもらうものなので、しっかりと安心・安全なものを作りを続けていきたいと思っています。 今後の展開としては、地産地消の文脈からは外れてしまう部分が出てくるかもしれませんが、日本人独自の目線で開発したIoTとか、そういった細やかなものだったり、日本独自に進化したサウナ文化を逆に輸出していくのは面白いと考えています。500万人の人口に対して2~300万個のサウナがあると言われている、サウナ大国のフィンランドなどに輸出できたら素晴らしいですよね。 この(地元の木材を使う地産地消の)コンセプトがうまくいけば、オープンソース的に技術を海外に拡大することもできる。それぞれの国の木材でそれぞれが作っていくモデルができていくと、地球に優しいサウナ造りに繋がっていくと思っています。
福島奇遇ですね(笑)実はライフスタイル的に『SANU 2nd Home』もいつもフィンランドを引き合いに出します。総世帯数が約267万世帯に対して約50万軒、サマーハウスを所有していると言われているそうです。 自然を最も愛する国だと思っています。森林率が日本と並んで世界トップ3で、木々に囲まれた国で。同じフィンランドをベンチマークにしていたんですね(笑)
揚松そうだったんですね(笑)サウナもこれだけ増えてますけど、やっぱり『SANU 2nd Home』+『ONE SAUNA』のような自然に還っていく場所が増えていくといいですよね。 未来への話は尽きないので、続きは改めてバレルサウナにでも入りながらゆっくりとおしゃべりしましょう。人と人とが向き合いながら繋がって何かが生まれるのがワンサウナの一番の魅力なので(笑)
ー編集後記ー二人の対談を通じて見えてきたのは、モノを作り上げるにはリアリティーとファンタジーのバランスが大切ということ。ここでいうリアリティーは素材の良さであり、ファンタジーは素材をよりよく見せるための調味料のようなもの。素材の良さだけを全面に出すことが必要な時もあれば、配合のバランスを臨機応変に変えてスパイスをたっぷり効かせることも大事。要はそのさじ加減なんだということに改めて気づかされました。
福島 弦(ふくしま げん)
株式会社Sanu CEO
McKinsey & Companyにてクリーンエネルギー分野の企業・政府関連事業に従事。その後、ラグビーワールドカップ2019日本大会の運営に参画。2019年、本間貴裕と「Live with nature. /自然と共に生きる。」を掲げるライフスタイルブランドSANUを創業。2021年11月にSANU 2nd Home事業をローンチし、現在(2023年12月)14拠点の自然立地で事業を展開する。北海道札幌市出身。雪山で育ち、スキーとラグビーを愛する。
揚松 晴也(あげまつ はるや)
株式会社Libertyship 代表取締役
1986年生まれ、宮崎県出身。専門学校にて航空整備士の資格を取得後、仙台空港にて航空整備士として従事。 2009年 埼玉県の会席料理店に転職、店長、調理師として働く。2012年 銀座の組織人事コンサルティングファームで営業、セミナー運営等の経験を積む。2013年 株式会社アラタナへ入社。EC構築パッケージの営業及び、ディレクターとして100サイトを超える自社ECサイト構築プロジェクトに参画。ECコンサルとして、集客・接客・CRMなど、自社ECサイト売上向上の支援も行う。2015年 スタートトゥデイ(現ZOZO)グループにアラタナがM&Aされてからは、部長としてファッションEC特化のフルフィルメント業務支援の運営や全体最適化コンサル等を実施。新規事業等の開発プロジェクトにも携わる。2019年 株式会社Libertyship設立。EC/WEBのプロジェクトマネジメント事業を営む。2020年 国産パーソナルサウナブランド「ONE SAUNA」をローンチ。2021年青島プロジェクトの取締役に就任。