Talk about ONE SAUNA vol.2 /北限のスギでつくるサウナに込めた想い
- Talk about ONE SAUNA
純国産で、地域活性化
ONE SAUNAが提案する価値のひとつに「国産木材を活用した地域活性化」がある。
国土のおよそ7割を森林に覆われた日本には、全国それぞれの土地に、その土地で育ち、その土地ならではの特色をもった木材がある。
その土地の木材を、その土地で使うこと。
それは、その土地の林業・木材産業の需要先をつくり、生まれた利益によってその土地に再び木が植えられて育つという、地域資源と経済のサステナブルな循環を生む。
そこでONE SAUNAでは、バレルサウナのモデルをオープンソース化し、全国各地の木材をつかったサウナづくりを展開。日本各地の職人が、地元の木材を使ったサウナづくりに取り組むことで、地域活性化に貢献している。
今回話を伺ったのは、北限のスギ「道南スギ」を使ったバレルサウナを製造する北海道プロジェクトチームのお二人。
バレルサウナの加工製造を担う家具屋「くらcra」鳥倉真史氏、サウナの材料となる道南スギを供給する(株)ハルキ 鈴木正樹氏に、ONE SAUNAに携わることになった経緯や想いを語ってもらった。
くらcra 鳥倉真史氏 |
(株)ハルキ 鈴木正樹氏 |
鳥倉真史:北海道函館市の石蔵で家具屋「くらcra」を営む。広葉樹を使用した家具だけにとどまらず、地元の地域材である「道南スギ」を活用した家具・雑貨など、多種多様な注文に幅広く対応するオールラウンダー。
鈴木正樹:北海道森町で製材から集成材、プレカット加工まで幅広く事業展開する木材会社(株)ハルキの取締役企画開発部長。木材業界の枠を越えた広い人脈と柔軟な発想で「道南スギ」を中心とした北海道産材の活用を推し進める。
「道南スギ」とは?
北海道で製造する純国産バレルサウナの材料は「道南スギ」。
寒さにそれほど強くないスギは本州ではメジャーな木だが、北海道においては比較的温暖な北海道の南部=道南(どうなん)地域でしか育たない。この道南地域に育つスギを「道南スギ」と呼び、本州のスギとは異なる特徴を活かしたブランド化が進められている。
鈴木「道南スギは今から250年ほど前に、松前藩により道南地域に植林されたのがはじまりです。道南スギの特徴は、まず色合い。本州以南のスギは黒っぽいんですけど、道南スギは綺麗なピンク色をしているんです。また、本州よりも寒冷な北海道で育つので年輪幅が狭く、耐久性もあると言われています。」
(株)ハルキの鈴木さんは、その行動力で道南スギの普及PRのキーパーソンでもある。
鈴木「他の木材に比べて、トゲやヤニが少ないので、直接肌に触れても安全ですし、柔らかい木材なので肌触りも優しいんですよね。また、スギは木材の中でも特に熱伝導率が低いので、熱しにくく冷めにくい。これはつまり、サウナで高温になっても熱くならないし、寒くてもひんやりしないということ。我が家のフローリングは道南スギですが、底冷えする真冬の朝でも裸足で歩けるくらいなんです。スギは昔から温泉やサウナのスノコなどに使われていましたけど、こういう特徴からもバレルサウナに向いている木材と言えますね。」
サウナに使用する道南スギの材。通直な木目にほんのりピンク色が入っているのが分かる。柔らかく肌触りが良いのも特徴。
鳥倉「道南スギはひどくねじれたり反ったりすることが比較的少ないという点でも、バレルサウナに向いていると思います。ONE SAUNAのバレルサウナは組み立て式なので、ねじれたり反ったりしやすい木材だと、どんなに精度良く加工しても、組み立て時に部品がはまらない…なんてことが起こってしまいます。その点、道南スギは木目が真っ直ぐ通っていて、その見た目通り狂いにくいのが安心なところです。」
道南スギの材料をバレルサウナの外壁へと加工する鳥倉さん。「道南スギは柔らかく素直で、加工しやすいのが特徴です。」
ONE SAUNAとの出会い
このように、道南スギはバレルサウナの材料に適性があることから、道南スギバレルサウナが誕生した。
鳥倉さんと鈴木さんがONE SAUNAに関わることになったのはどんな経緯だったのでしょうか?
鈴木「プロジェクトの立ち上げに関わった宮崎の(株)川上木材さんとは、スギ繋がりで元々親しくさせてもらっていて、『北海道でバレルサウナの注文があるから道南スギで作ってみないか?』と声をかけてもらったのがきっかけです。送られてきた図面を見ると、作り込みが多いのでうちだけでは無理だけど、鳥倉くんがいればできるなと思い、鳥倉くんと相談して引き受けることにしました。」
鳥倉「ハルキさんである程度製材してもらった道南スギを、うちでバレルサウナへと加工しています。外壁はもちろん、土台や扉、サウナ内のベンチなど全て作製しています。」
鈴木「本来は家具屋さんだから普通は扉なんて作らないでしょ?(笑)」
鳥倉「そうですね。(笑)でも、独立前に勤めていた会社でキャビネットの扉を作ったりもしていたので、その経験が活きていますね。」
ハルキさんとくらcraさんが組んだからこそ可能になったんですね。
鈴木「そうですね。鳥倉くんがいなければできませんでした。」
(株)ハルキの製材工場の本機。丸太から製材を経て、サウナの材料がつくられる。
バレルサウナの土台部分をつくる鳥倉さん。バレルサウナの製造は、このような手作業での工程が多い。
ONE SAUNA×道南スギで起こる化学反応
普段から、道南スギをはじめとする北海道産木材を積極的に活用している鳥倉さんと鈴木さん。ONE SAUNAの「サウナづくりを通して地域を元気に」というコンセプトに共感するとともに、「サウナ」という親しみやすいツールを通すことで、より多くの人に北海道産木材を知ってもらうきっかけになると実感しているという。
鈴木「ONE SAUNAのように、地域の木材を使ってその地域で売るというスタイルは、SDGs やカーボンニュートラル(※)が重要視されている今、必要とされている取組だと思っています。材料のPRにもなるしね。」
鳥倉「取材も結構受けましたね。道南スギバレルサウナをサウナイベントに出した際はテレビでもかなり取り上げられて、新聞にも載って。今でもたまに問い合わせが来ます。道民の皆さんに道南スギを知ってもらうきっかけになったんじゃないかな。」
札幌中心部でのサウナイベントで展示された道南スギバレルサウナ。
鈴木「意識の高い人はサウナを買うにしても、材料はどこのものを使っているか、サステナブルな生産がされているかということを意識すると思うし、今後それが普通になる時代が来ると思っています。『サウナ』という親しみやすいツールを通して、意識の高い人だけでなく一般の人も、『木のサウナっていいね』から『地域の木材を使うっていいね』という風に思ってもらえたらいいなと思いますね。」
鳥倉「需要の多いサウナ事業は家具業者の収入源にもなるし、その地域の作り手側も活性化してくれます。やっぱり『地域のものを地域で使う』というONE SAUNAのコンセプトはすごく素晴らしいコンセプトだなと、一緒に仕事を始めた時から強く共感しています。」
最後に、ONE SAUNAと関わられて、今後の展望などありますか?
鈴木「こうして『サウナ』をきっかけに、本来はウェブ関係のお仕事をされているLibertyshipさんと、我々木材産業界が繋がったことはとてもありがたいご縁だと思っています。森林や木材産業ってこれからのサステナブルな社会に向けてますます重要度が増してくる分野だと思うので、今後もサウナに限らず、木材産業と異分野が掛け合わさってできる新しいことを一緒にやっていけたらと思います。」
鳥倉「このサウナ事業で、木材産業界にないスピード感と先を読む力、豊富なアイデアに触れて刺激をいただいています。僕らもステップアップしながら、今後も新しいアイデアを一緒に実現していけたらいいなと思っています。」
くらcraの工房 |
株式会社ハルキ |
くらcra
https://kura-cra.jimdofree.com/
株式会社ハルキ
https://mori-haruki.co.jp/
株式会社Libertyship
https://libertyship.jp
国産バレルサウナ「ONE SAUNA」
https://onesauna.jp