talk about kupu sauna|STORY02-side of ONE SAUNA ロウリュの流れまでデザインする。フィンランドの記憶から生まれた kupu sauna
.webp&w=1920&q=75)
友人の家に行けばまずサウナ。スポーツの後もサウナ、パーティーの途中でもサウナ。フィンランドで過ごした「当たり前のサウナ時間」がkupu saunaのプロファイルや室内の熱のめぐり方にそのまま息づいています。熊野さんがフィンランドで重ねたサウナ体験の断片とONE SAUNAの「コミュニティが生まれるサウナづくり」の哲学が重なり、単なる箱ではない、“人が集う”kupu sauna という“クラフトサウナ”が完成しました。

ーーーまずは、熊野さんの「サウナ体験の原点」から伺えますか?
熊野:21歳のときにフィンランドに行ったのが原点です。当時、日本では今みたいな“サウナブーム”は全くなくて、乾式サウナが100℃で…くらいのイメージでした。
フィンランドでは、友達の家に遊びに行ったらまずサウナ、スポーツしたらサウナで締める、パーティーの途中でも「ちょっとサウナ行こうか」と連れていかれる。とにかく日常の真ん中にサウナがあるんです。
特別な体験で言えば、サマーハウスにあるサウナに入って、そのまま湖に飛び込む。冬は“アバント”といって、凍った湖に穴をあけてそこに入る。冷静に考えるとちょっと異常なんですけど(笑)、それくらい生活に溶け込んでいる。
そういう「日常のサウナ体験」の記憶が、今回のデザインのベースになっていると思います。
.webp)
ーーーデザインするうえで、特に意識したポイントは?
熊野:一番意識したのは「熱と蒸気のめぐり方」と「座る場所の自由度」です。
バレルサウナって、丸くて両サイドにベンチがあるので、どうしても高温帯が上に溜まりやすい。実際に青島へ行ってONE SAUNAさんのバレルサウナに入らせてもらった時も「一番熱い層に頭を持っていきづらいな」と感じていました。
フィンランドのサウナでは、体調や気分にあわせて「今日は下の段でゆっくり」「もう少し攻めたいから上に」みたいに、座る場所を選ぶ文化があります。その“選べる自由”を、このコンパクトなサウナの中でどう再現するかをずっと考えていました。
そこで考えたのが、kupu sauna 独自のプロファイルです。天井の一部に“角”をつくることで熱と蒸気がたまりやすいゾーンを意図的につくり、そこに頭を置けるようにした。一方で、下段に座ればマイルドな温度帯で楽しめる。ロウリュをした時、蒸気がどう流れ、どこに滞留するか。
フィンランドで体感したスモークサウナ(煙突のない、最も原始的なサウナ)の体験も思い出しながら、その“気流のデザイン”をかなり細かく詰めていきました。

ーーーONE SAUNAの「コミュニティ」というキーワードとも重なりますね。
揚松:ONE SAUNAが大事にしているのも、ただ「健康のために入る箱」としてのサウナじゃなくて、「コミュニティが生まれる場」としてのサウナなんです。サウナに入って、外気浴をして、また戻ってきて。
そこで生まれる雑談や、裸同士の付き合いだからこそフラットに話せる関係性。フィンランドの言い習わしで「サウナに入ればみんな平等」という言葉がありますが、ONE SAUNAが目指しているのはそこで、まさにそれを日本でどう作るかを考え続けてきました。
kupu sauna でも、その“関係が生まれる間”を大事にしています。
みんなで同じ方向を向いて黙って整うだけじゃなくて、笑ったり、少し話したり。下段と上段で温度帯が違うからこそ、それぞれが居心地のいい場所を選びながら、同じ時間を共有できるんですよね。

ーーー細かなディテールも、体験に直結していますよね。
熊野:サウナは基本、裸で触れる空間なので、家具以上に「触感」をシビアに見ています。背もたれの角度、ベンチのエッジの取り方、ドアハンドルの裏側のアールなど。
特にドアハンドルは、サウナで最初に触れる部分で、クオリティを強く感じる場所です。吉野檜は柔らかいので、木を薄くしすぎず、厚みとボリュームを持たせつつ、優しい触り心地になるような形状にこだわりました。

そして、室内のベンチは取り外し式にしています。フィンランドの友人が「床を徹底的に掃除できることが一番大事」と自慢していたのを思い出して、中を水でバーっと洗ったときに、どこにも水がたまらないように、木口が長く濡れないように設計しています。
揚松:見た目だけ“映えるサウナ”って、今けっこう世の中に多いと思うんです。kupu saunaは、ちゃんと入ったときの体験──熱のまわり方、座り心地、掃除のしやすさまで含めて、“機能美”としてデザインされている。
ONE SAUNAのバレルサウナで培ってきたノウハウと、マルニさんの木工技術、熊野さんのフィンランドでの体験が、一つになって生まれたのがkupu saunaです。

ーーーフィンランドの文化を、そのまま落とし込むのではなく、日本ならではの解釈で再編集している印象があります。
熊野:そうですね。日本には「熱波師」とか「整う」といった、フィンランド語に訳しづらい独自の文化も生まれています。
フィンランドで学んだ「日常のサウナ」をベースにしながら、日本人の感性やONE SAUNAの思想と掛け合わせることで、kupu sauna は“クラフトサウナ”と呼べるような、新しいサウナのあり方を提示できるんじゃないかと感じています。

■PROFILE

熊野 亘
プロダクトデザイナー。2001-2008年にフィンランドへ留学、帰国後Jasper Morrison氏に師事。2011年にデザインオフィス“kumano”を設立し、環境、機能性、地域性など、背景のあるデザインをテーマにNIKARI、CAMPER、カリモク家具、天童木工などの国内外のメーカーとプロジェクトを手掛ける。2021年にスイスのローザンヌ州立美術学校(ECAL)にて教鞭をとり、同年秋より武蔵野美術大学准教授に就任。

株式会社マルニ木工 代表取締役社長
山中 洋
1971年生まれ。1994年明治大学商学部を卒業後に渡米。1998年米国オールドドミニオン大学経営大学院を卒業後に帰国し、1999年株式会社マルニ(現 株式会社マルニ木工)に入社。入社後まもなく英国の提携工場にて家具製造の基礎を学ぶ。帰国後は営業職を経て社内の様々な機能改革に従事し、「MARUNI COLLECTION」、「MARUNI60」等、外部デザイナーとの企画を積極的に推進。ブランド戦略や商品企画、セールスプロモーションの構築に携わり現在に至る。2021年株式会社マルニ木工代表取締役社長に就任。2015年家具の修理を専門とするグループ会社の株式会社マルニファニシング代表取締役社長に就任。

株式会社Libertyship 代表取締役
揚松 晴也
1986年宮崎県生まれ。航空整備士、調理師、アラタナ、ZOZOグループでのEC事業部長などを経て、2019年に独立。 グローバルECやWEBメディアのコンサルティングを行う一方、地域資源を活かしたライフスタイル事業を展開。国産サウナ「ONE SAUNA」のローンチや、「AOSHIMA BEACH PARK」の運営等を手掛ける。 2024年より宮崎交通と提携し、「こどものくにビルドアッププロジェクト」を始動。「AOSHIMA PICNIC CLUB」としてグランピング施設やベーカリーレストランを有する、宮崎の新たなランドマークづくりに取り組んでいる。
Photos:Norio Kidera
Edit:akira yamamoto